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「ちょろちょろしねぇように、お前が見張ってりゃすむことだろう」
「マジ殺すぜ。美和に手を出したらよ」
「はいはい」
振り向かずに返した僕がお気に召さないのか、さっきより強く、肩を寄せてきた
「スカしたツラ歪ませてやろうか。そこ、ドボーンって突き落としてよ」
「クソは最低なことしか考えねぇな」
「んだと? マジで落としてやろうか、テメェ」
気色ばんで詰め寄ってきた哲平の後頭部から、パーン!
派手な音が上がった
数冊丸めた宮島のパンフレットで、前に2・3歩よろける勢いで叩いたのは
「浩介」
いてー
頭を抱えた鉄平の膝裏を爪先で蹴飛ばし、カックン
マンガみたいに膝から崩れ落ちた鉄平の
「なーにやってんのかな」
背中や腰に何発も、いたぶるように軽い蹴りを入れる浩介の機嫌は最悪らしい
先生に「やめろ!」注意されても
「遊びでーす」
切り返せるよう声は惚けさせてるけど
怒りに燃えた目が、怖い
「鉄平ちゃんよう、薫は俺のツレだぜ? お前ごときが脅していいと思ってんの? なあ、どうなのよ」
兄の保と並び立っても見劣りしない体躯を誇る浩介は、僕の幼なじみ
クラスの人気者の彼はさっきまで、写真撮影会の中心にいたのに
絡まれる僕に気づいて、駆け付けてくれたのだろう
・・・・・・嬉しい、けど
僕は見たくない
高い位置から見下ろす据わった目に怯え、縮こまる鉄平ではなく
怯える人間を蹴り続ける浩介を
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