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「もういいって、浩介、やめよう」
「ムリ。別に薫のためじゃねぇし、俺が気に入らねぇだけだから気にすんな」
「鉄平に何の恨みがあるっての」
「俺のツレに手ェ出したこと」
「何それ、僕絡みじゃないか」
「薫だとは言ってないだろ。ツレって言ったの、オレは」
全くもう
拗ねた口調で言って、唇を尖らせ笑う浩介にズッコケそうになる
わざと隙を作って鉄平を逃がす浩介の、非情な男に徹し切れない優しさを、僕は好き
「アイツ、マジでムカつく」
立ち上がった鉄平が、いつも連む島田の隣へ駆け込むのを見届けた浩介から、笑顔が消えた
「ごめんな、薫
俺が母ちゃんに喋ったせいで、卒業旅行に参加するんだろ
無理してないか?」
えー? 浩介ってば
「そんなこと気にしてたの?」
「するさ。今だって、絡まれちまっただろう」
三年になって哲平と同じクラスになったのは僕の不運だけど、浩介と同じクラスになれたのは僕の幸運
最高のクラスで最高の仲間と、中学最後の一年を過ごした
体育祭でバニーガールの仮装して
文化祭でダンス大会に出場した
バカみたいに弾けた僕たちを笑って許してくれた先生や、クラスメートたちと旅行に行けるのは、嬉しい
「助けてくれたじゃん」
「当たり前だろ」
真顔で『当たり前だろ』言われると、照れる
肩を浩介に寄せて
鉄平と比べ物にならない腕の筋肉を感じながら「知ってる」笑って、集合場所まで歩いた
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