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僕が相手にしてる女は、言葉の通じない人外の生き物だったのか? 慎重に目線を向けた僕に 美和は、オレンジ色の口紅を塗った唇を動かした 「誰のことが好きだったのよ やっぱり鉄平? 突き落とされたのに、ふざけただけだと庇ったくらいだものね」 何を言ってるんだ? この女 確かに 事情を訊きにきた刑事さんに、コトを荒立てる気はありません 言ったけど 「鉄平を庇った記憶はない」 守りたかったのは丸木先生と、楽しかった思い出に決まってる 変態じゃあるまいし 毎日のように僕に絡んできた上に、命まで脅かした男に好意の感情など 持つわけないだろう 「遊び慣れてない子に興味を持つ男って、結構いるのよ 薫のベッドの相手くらい 保さんとの仲を取り持ってくれたら、すぐに紹介してあげるんだけどな」 この女、イカれてる 背中に流れ落ちる冷や汗だけでなく 美和から漂う狂気とキツい香水の匂いに、身震いが止まらない 落ち着け 冷静に考えるんだ。この女の弱点を 「あのさ」 「なあに?」 ふっと脳裏に浮かんだのは、相手が誰であっても手加減しない男の顔 「此処で待ち合わせしてるんだ浩介と 彼にストーカー行為規制法違反だと通報される前に、消えた方がいいんじゃない?」 バカだ、僕 栄太の名を口にするつもりが、女性に優しい浩介と言ってしまった
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