呼吸

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 友人は戸惑ったような言葉遣いながらもからりと笑って電話を切ろうとした。僕がそれを阻止した。 「あ」と、僕は言った。 「ん?」 「じゃあね」 「はは、なんだよそれ。ま、じゃあな。またあとで」  不穏なものを感じたように一瞬声を低めたが、電話は至って普通に切られた。  さて、と。  倒れた拍子に物が太ももに食い込むのが嫌だったから携帯やら家の鍵やらはすべて地面に放りだした。それからカッターナイフを握り、即座に自分の腹部へと突き立てた。
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