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やることが無くなった私はとりあえず本棚に目を向けたがすぐに辞めた。
栄子の本棚に並んでいるのはほとんどが少女マンガなのでどちらかと言うとミステリー小説やルポルタージュが好きな私には興味が無かったからと言うのもあったが、本当のところはこの「アイル」と言う物がどうも気になっていたのだ。
私は床の上にひざまづくように屈むとベッドの上に寝かされているアイルに思い切って手を延ばした。
人差し指の先でそっとその髪に触れてみる。それはさらさらしていた。
小顔に張り付いた円らな瞳が私をじっと見つめているような気がしてならない。
何となく恥ずかしくなってそいつから目を反らした時、妙にエロティックな気持ちが体中を包んでいくのが分かった。
人形を前にこの感じはいったい何なのだろう?
どうしようも無くなってしまいそうな歯がゆさに怖くなり思わずアイルをベッドに叩きつけそうになった、その時である。
「ねえ、ぎゅっとしよう?」
例の甘ったるい声でアイルは言った。
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