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「ねえ、もしかしてあんたもあのボーカルの声嫌いだった?」
ビルから大通りに出てすぐの横断歩道で赤信号で止まったところでようやく栄子に追いついた私は聞いてみる。
「いや…」
栄子は突然口ごもった。
どうしたんだろう?少し気になったけれど丁度その時青信号を告げるひよこの声がしたので私たちは早足で歩き出した。
「あのさ、亜紀」
私よりも一足先に信号を渡り終えた栄子は深刻そうな声で私を呼んだ。
「何?」
少し戸惑いながらも私は信号を渡り終えると彼女の横に並んだ。
「じつは私、最近好きな人ができて…」
「えっ…?」
そっかーやっぱり、と言いたいところをこの場はどうにか堪えた。
改めて栄子を見ると、髪型もそうだけど頬や体つきも以前よりもふっくらと丸くなったような気がする。
これも音大の授業があまりにもたいへんだったからついやけ食いしちゃったからなのだろうか?
いや違うだろう。
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