私たちとアイルのやばい夜

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久しぶりに来た彼女のアパートは前回来た時とはさほど変わっていない様子だった。 ところ狭しと生活用品で埋め尽くされたリビングを通り抜けて栄子の部屋へと入る。 彼女の部屋はベッドの上や本やCDが入ってる棚の上、さらには部屋の壁に至るまでキャラクター物のぬいぐるみで埋め尽くされていた。 この家の家族はゲームセンターが好きらしく行く度にクレーンゲームをやっているのだとか。 その中で私の分かるキャラクターはキティちゃんとピカチュウ、最近のやつではじばにゃんぐらいと言う誰でも知ってそうな物しか認知していない。後は何の生物なのかよく分からないキャラクターばかりである。 「亜紀、紹介するよ。こちらが私の彼」 ぬいぐるみたちをぼーっと眺めていた私の耳に栄子の声が響く。 「えっ、あっ、あー…」 我に返った私はここに来た当初の目的を思い出し思わずあたふたしてしまった。 栄子の前に1歩進み出て辺りを見回す。だが、 (えっ…?) 頭の中をクエッションマークが駆け巡る。 誰も居ないのだ。栄子の彼と思しき人が・・・。 「…誰?」 「ほらこの子だよ」 当然ながら尋ねた私に栄子は自分の手の中に収まっている1体の人形を指さしたのだ。
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