プロローグ 理想の甘さ。

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殺気だった私に気づいた浜ちゃんが、さっと普段のテンションに戻して視線を逸らすがもう遅い。絶対に後で覚えてなさいよ。 「照れるくるみも可愛いな」 アイスティーを飲みながら、爽やかにジンさんは笑う。 「照れてません!」 素っ気なく言うと、ドライヤーのスイッチを切って、乱暴に腰に巻いてあるシザーケースから櫛を取り出す。 「では、その、仲良くしてくださいね」 浜ちゃんがドライヤーを持って退場しようとすると、ジンさんは鏡越しに浜ちゃんを居わたる様に笑いかけた。 「ありがとう。仕事中は口説いてはいけないらしいから、大人しくしているよ」 「――――!」 この人の口に、甘い言葉が出ないように辛いものでも押し込んでやりたい。 浜ちゃんなんて真っ赤になって倒れそうになりながら、レジに走っていったし。
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