ランニングポリス任命

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「おはようございます。先輩!」 「お~おはよ~。……お前、いつも元気だなぁ」  眠そうな先輩達に苦笑いを浮かべ、奥の更衣室へ向かう。 「あぢぃ~!!」  汗で肌にまとわりつくジョギングウエアを一気に脱ぎ捨てた。  夏はすっかり終わり、そろそろ秋の空気へと変わって来てはいたが、今さっきまで走っていた俺は、毛先から汗がしたたり落ちている状態。  タオルを頭に乗せて、一気にわしゃわしゃかき回す。  現在俺は、渋谷区にある交番の巡査だ。  大学を卒業して警察官試験を通り、警察学校での研修を終え、渋谷警察署の地域課・渋谷区南交番勤務になった。  今年で2年目。  そろそろご近所からは『イケメンおまわりさん』なんて、親しみを持たれてきたかなー、ってとこ。 「あー、さっぱりした!」  ぐっしょりと重たくなったシャツやらなんやらを、洗濯機に投げ入れてスイッチを押した。  渋谷警察署の更衣室内には、シャワールームとトイレの他に、洗濯室がある。  洗濯機5台と、乾燥室があって、洗った衣類を干しておけるというすぐれもの。  朝、洗濯機に放り込んで昼休みに回収し、乾燥室に干しておけば、同じシャツを着て帰ることができる。めちゃエコじゃね?  昨今の『エコ通勤』ブームの波に乗った形での導入だったらしいんだけど。実際一時期は、多くの警察官や職員が自転車やジョギングで通勤したらしい。  が、ブーム衰退と共にその数を減らし、今では数えるほどだとか……。  俺の場合は、独身寮から渋谷警察署まで約5キロ。  走って通勤すると、信号を考慮してもまあ30分くらいで到着できる。  事故やら何やらの交通機関の影響を受けずに済むし、都会はどこ行くんでも走った方が早いという理由で、このエコ通勤とやらを続けている。  それにもう一つ、俺には俺だけの理由がある。
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