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後藤大二郎は現在、警視庁第四機動隊所属している。第四機動隊といえば、鬼の四機と呼ばれ、もっとも過酷で強靭な隊だと言える。
見た目はまさに鬼にふさわしい後藤だったが(もの凄く厳つくて強面なのだ)人懐っこく、誰にでも気さくなやつで、この寮にすぐに馴染んでいた。
対して俺は、渋谷区南交番勤務が決まって、兼ねてから希望していた陸上部には入部できず燻っていた。
陸上から離れるのが怖くて、俺は暇さえあれば、外に走りに行っていた。
通勤時間も、それ以外の時間も。
寮の奴らと馬鹿話してる時間があるなら、走っていた方が良いと思っていたから。
そのうちみんな俺を『陸上馬鹿』と言って近づかなくなった。
だけど後藤は、何かと俺に話しかけてきた。
俺が足の調子を悪くした時「俺こういうの上手いんだぜ」と言って、頼んでもいないのに手際よく湿布を張り巡らせ、テーピングを巻いてくれた。
そんな後藤に、俺も何となく打ち解けて……、こいつが勝手に部屋に入って来ても、何も思わなくなった。
いつの間にか後藤に対してだけは、友情みたいなものを感じていた。
「坂本さんさ、俺が柔道そこそこ強いってこと、どこからか聞きつけてさ。
俺の事すごく褒めてくれて、俺が刑事になりたいって話したら
『そうか、お前なら立派な刑事になれる』って言ってくれて、刑事課の同期に話してやる、って……。
俺の上司ってクソみたいなやつだったから、坂本さんを頼ろう、って決めたんだ」
そうだった……、後藤は、ただでさえ過酷な訓練や警戒警備で酷使されているというのに、上司が何かと嫌がらせをしてくる(要は新人をはけ口にしている様な、クソな奴なんだ)と悩んでいる時期があった。
「実際、坂本さんが上に口きいてくれて、俺の待遇は前よりずいぶん良くなったんだよ。
坂本さんの言う通りにしておけば間違いない、みたいな方式が出来上がってきて……、なんか知らんけど、あれよあれよと巻き込まれてさ。いつの間にか駒にされてた」
後藤は苦々しくそう告白して
「俺、あの人の駒だよ。もう逃げらんねぇよ……」立てた膝の間に顔を埋めた。
「後藤……、俺は……」
言葉が続かなかった。
何を、どんなことを言えばいいのか、分からなかったんだ。
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