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「先輩……ごめんなさいごめんなさい、大好きです」
「うん、知ってる。だから落ち着こうぜ」
先輩は僕の背中に腕を回してあやすそようにさすってくれる。その腕の温かさに、僕はやっぱりこの人が好きだなぁ、と改めて実感した。
それから先輩が用を足した後、デジカメはものの見事に壊れて使い物にならなかったのでスマホで先輩とのツーショットを菜月先輩に撮影してもらった。
僕と肩を組んでカメラに向かってピースサインを送る画面の中の先輩を見るともう天にも舞いそうなくらい嬉しくて嬉しくて先輩とこの気持ちを分かち合いたくって、年賀状にこの写真を印刷して出すので住所を教えてくださいと言ったら断られてしまったので先輩にメールで写真を添付して送り、名残惜しくも先輩と別れて部活へ向かった。
でも、やっぱり今日一日撮った先輩の写真が失われてしまったのは惜しかったな。こうすることになるなら先輩の姿を肉眼でまじまじと見ていればよかった。
ちょっとだけ後悔しながらスマホを制服のポケットにしまおうとして、その中に入れられたメモリーカードの存在に気付く。
そうだった。先輩とのツーショット以外の写真は、全部このメモリーカードの中に保存されてるんだった。これで冬休みの間も色んな先輩の表情を眺め尽くせる。
あぁ、なんて幸福なんだろう。あんまり浮かれすぎていて、うっかり階段を踏み外して落下して全身を強く打ち付けてしまった。
でも身体のあちこちが痛いだとか、心配して声を掛けてくれた生徒達が僕の顔を見るなり薄気味悪そうな表情をして去っていったのだとかは、全く気にならなかった。
だって僕の心はとっくに、先輩への恋に落ちているんですから。
「……ふふふ」
笑いが顔だけじゃなく声にまで出る。笑い声を漏らしながらゴロンゴロンと床の上でのたうち回る僕の姿に、行き交う生徒たちが遠巻きに避けて行く。
絶対に幸せにしてあげますよ、先輩。だから……早く貴方も、落っこちちゃってください。僕への愛に。
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