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「け……圭都くん?」
先輩が髪だけじゃなく顔まで真っ青になって僕を呼んだ。
もしかすると先輩も、僕の行動を見てあの時のことを思い出したのかもしれない。ますます僕のことをどうしようもない奴だと思ってしまったかもしれない。今すぐにでも滅茶苦茶に叫びだしたい気分だった。いっそのこと気が狂ってしまえば楽になれるのに。
「ごめんなさい……」
だけど僕の口から零れたのは、とても情けない涙ぐんだ声だった。
「カメラは壊しました。これでもう絶対にこんなことしません。神にでも悪魔にでも誓えます。何なら土下座でも何でもしますから、僕のこと嫌いにならないでください。先輩に嫌われたら僕……もう、生きてる意味がありません……」
もしも先輩に軽蔑の目を向けられたら。僕は間違いなくこの手で自らの命を絶つだろう。でもそれだけじゃ生温い。いっそのこと僕という存在自体をこの世から消し去ってしまいたい。なかったことにしてしまいたい。
「……圭都くん」
ぐすっ、ぐすっと僕が泣きじゃくる声だけが聞こえる中、先輩が口を開いた。
思わずビクンッと肩が震える。次に何を言われるのか、脅える僕に掛けられた言葉は予想外のものだった。
「写真、撮ろうか。一緒に」
「…………え?」
呆けた声を出して、先輩の顔を見つめる。涙で視界がぼやけて先輩の顔がよく見えない。
涙を拭って改めて先輩の顔を見ると、先輩は笑顔を作って僕の顔を覗き込んでいた。
「昼休みにしようと思った話の続き。俺と会えなくて寂しいから写真撮ってたなら、俺と圭都くんのツーショット撮ろうって。だから、その代わりそれで写真撮るのはやめにしよう」
ね、と先輩は言って、僕の肩に手を置く。そんな彼の優しさに、先程よりも一層盛大に涙が溢れ出した。
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