オネエ妖怪の言うことには

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呼び止められて振り返るとそこには、誰も居なかった。 ヘンだな。確かに声がしたんだが。 「ちょっと、そこのお兄さん。」 男とも女とも形容しがたい。 身の毛のよだつような声だった。 気のせいか。 少年は気を取り直すと、暗い街灯のない夜道を歩き出した。 そのすぐ後ろを怪しげな影が追う。 その姿はヒトには見えない。 細心の注意を払い、そいつは、少年の後をツケ狙っているのだ。 ー数十分前。 「じゃあ、また明日なー。」 「おう、またな。」 二人の男の子が分かれ道で挨拶を交わしている。 高校生くらいかしら。おいしそう。 一人になったわ。しめしめ、いただくとしますか。 そう思って近づいて行くと、一人はずっともう一人を見つめ、見えなくなるまで立ちすくんでいる。 もう一人の男の子が見えなくなると、はあと切なそうに溜息をついた。 こ、これは・・・・。久しぶりの。 ノンケじゃない男の子の垢が舐められる!なんてラッキーなのかしら、私! 私は妖怪。垢舐めと人間からは呼ばれているけど、そこいらの垢舐めと一緒にしないでね。私が舐めるのは、美少年の生の垢だけなの。 今日は極上なのをいただけそうだわあ。 「ちょっとそこのお兄さん。いただきまーす。」 その少年の首筋を舐めようとしたとたんに、こめかみに痛みを感じた。 「あいたたたたた。」 私は少年の大きな手でアイアンクローを決められていたのだ。 「おいおい、妖怪が俺に、何か用かい?」 「な、なによ、そのベタなダジャレは!はなっ、はなしなさいよ!痛いじゃない!」 「やだね。離したら変なことするつもりだろ。このオカマ妖怪。」 「オカマって言わないでよ。オネエって言ってよね。何もしないから、離してぇ。」 すると、少年は急に手を離し、私は無様にこけて這いつくばった。 「いたたた。乱暴ねえ。」 「乱暴なのはどっちだよ。いきなり後ろから襲うとは。卑怯だろう。」 「でも、気付いて無事だったじゃない!私のこと、見えるの?」 「まあな。俺、神社の息子だし。ここいらで悪さしてるのは、お前だな。 うちの親父に言って祓ってもらうか?」 「仕方ないじゃない!私は垢を舐めないと生きていけないのよ。」 「じゃあ、誰も居ない風呂場とかでこっそり舐めてろよ。」
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