1章

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 自由を求めても、何処かで常識という概念に突き当たる。  肉体から離れた精神は、いつしかその常軌を逸し、己の欲望のままに馳せ回る。それこそが真の自由だと、それこそが不穏当すら人を導く標べにしてしまうような自由だという事を、誰が現世を離れて言散らすと謂うのか。  その世界には、大きく分けて二種の人間が存在していた。一方は力を持つ者ともう一方はそうでない者。その力はフォースと呼ばれ、永年畏れられてきた。使い用によれば、人類の成長ないしは経済発展を助長したであろう。だが、それは不合理というものだ。   貪欲な人間は、愚かにもその私欲を満たす為に‥‥‥そして人類の頂点に君臨することを懇望し、意味もなくその力を振るった。 ーー結果どうなったか。  そう、フォースを纏う人間は全て否応なしに異端者とされた。異端者に人権など無い。例えサバイバルナイフで滅多刺しにしようが、その行為は誰からも咎められない。むしろ英雄としてこの先語り継がれていくかもしれないのだ。  英雄と呼ばれたその人種は、鼻高々に無意味な殺戮を繰り返すだろう。無論、異端者達はそんな殺戮を傍観する程、愚劣ではない。しかし愚劣ではない彼等が生んだものは富でもなければ自由でもなかった。  ただ一つ、戦争だけだ。世に落ちた戦火は瞬く間に広がる。 ーー力こそが人類の根源で、それを行使し続けなければならないというのなら、いっそこの手で全てを毀してしまおうか。  人類の、否、世界の終焉を知らせる足音がもうすぐそこまで迫っていることに、まだ誰も気づかない。
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