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「この屋敷の主は私の友達が住んでいるのよ。その人を今から説得する」
「友達にメイドをさせる神経、狂ってるぜ」
何を考えているのか意味不明である。
「いいのよいいのよ。その子はね将来とある人物のメイドになるのを目指して日々生きているのだから」
「とある人物?それが今回仕える我が儘お嬢様になるのか?」
「ならない」
ならないのかよ……。
「そのとある人物っていうのはね……」
じっと俺に視線を合わせてくる。
なんだ?
まるで、俺であるかの様な――。
「まぁ、今は関係ないからいいや。あんたが説得する際の切り札になり得るジョーカーになるのよ」
「あっそ」
露骨に話題をすり替えられた。
別に俺がメイドを雇える人物じゃないのは知っている。
単にメイドが好きなだけである。
「たのもー」
インターホンも押さず屋敷の扉を開けた巫女。
ビー、ビー、ビーと大袈裟な防犯システムが作動してしまった。
「じゃああんた気配消して私に着いてきて。絶対に屋敷の主に気付かれないでね!私は部屋に連れて行かれるだろうけどあんたは部屋前に待機して私が合図したら中に突入しなさい」
「長いよ!防犯システム鳴らす前に打ち合わせして!」
とりあえず巫女の言い付けに従い気配を殺す。
空気と同化させる様に気配を擬態させる。
「うわぁお、もう私ですら見失っちゃった」
そんなわけあるか……、既に俺の居る方向とは違う方向を見ながら呟く。
演技なんだよな?
「もう、また防犯システムをインターホン変わりにしたんですか!?いい加減辞めてくださいよ巫女様!」
「あら今日はメイドバージョンじゃないのね」
「今私は卒業式から帰ったばかりなんですよ」
なんかすごく地味な印象の茶髪でセミロングな長さの髪の女性が屋敷から現れる。
特徴といえば右目の下にある泣き黒子くらいだ。
年齢は俺と同年代くらい。
卒業式から帰ったという言葉を信じるならもしかしたらこの子も今日義務教育を終えたのかもしれないな。
「それでどうしたんですか……?今の私は疲れてて遊ぶテンションとか依頼を受けるテンションじゃないんですけど……」
「そうなの?」
「さっきまで友達に連れ回されてちょっと疲れていて機嫌悪いです」
「友達だなんて。うちの弟に聞かせてあげたい……」
当て付けの嫌味が俺に届いている。
少女も少し目を細めたがすぐに表情が戻る。
……俺に反応したのかな?
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