青年は独りでも面倒事に巻き込まれる法則

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「勉強!習い事!睡眠!あー、つまんない、つまんない!新しい事をしたっていう刺激、風が欲しいの!」 「刺激が欲しいか」 「刺激が欲しいわよ」 なるほど。 俺は立ち上がり自動販売機に向かう。 ベンチに取り残されるのが寂しいのか暇なのかはわからないが彼女もとことこと着いて来る。 「あら?なんですのこれ?並べてあるのは缶詰め?」 「飲み物だよ」 「え?これ飲み物なんですの!?よく道に設置してあるのは車越しで見た事ありましたけどまさか飲み物だったなんて……」 キラキラとした目で自動販売機を見つめている。 世間的な事が何個も抜けすぎじゃないか? 「妹がよく缶詰め食べてたから好きそうだななんて思ってたのに飲み物だったのね」 「…………」 いや、違うよね? あいつとこいつ関係ないよね? 「お、お前って……」 「それでこれがどうかしたんですの?」 「ああ。金を入れると物が落ちてくる取り引きするものなんだよ」 小銭からとりあえず200円取り出した。 「え?凄い時代感じる小判ね!和同開珎って奴かしら」 「和同開珎……」 デジャヴが激しくなってきた。 youのぶんだけ飲み物を買おうとしたが、俺のぶんも買って少し落ち着こう。 俺にはコーヒー、youにはジュースを買った。 「うー、ユキさん缶切り貸してくださいな」 「必要ねーよ」 プルタブを開けてやったのを渡し、すぐにyouはジュースに口を付ける。 「……け、結構ジガジガしますのね」 「刺激の強い強炭酸さ!ほら来た、刺激!」 「しょうもない、しょうもない!違う違う!わたくしの望んだ刺激はこんなものでは無いですの!」 ちょっと怒りながらyouは俺の飲んでいた缶コーヒーをぶん取りやがった。 「ブッ!」 「ブッ!」 youがコーヒーを飲んだ瞬間噴き出し、その反応が変に刺激され俺も噴き出してしまう。 コーヒーの噴き出しって欠伸や風邪と同じで移るんだな……。 「な、何この飲み物……」 「コーヒーだよ!それすら知らないのかよ!」 「コーヒーは知ってますわよ!でもこれはコーヒーじゃないですわ!黒い液体じゃないですか!」 コーヒーの缶を俺に押し付ける。 再び間接キスした事になっているのにそれに対する反応が無さすぎる。 「安物って奴かしら……。こんなに不味いコーヒー生まれてはじめてですわ……」 コーヒーを作ったメーカーに謝れ……。 それを買った俺にも謝れ……。
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