134人が本棚に入れています
本棚に追加
本日、中学校の卒業式があった。
義務教育が終わりを告げて進学する者、就職する物へと人生が分岐していく。
俺はなんの目標もなく、数年後の自分像を考えぬまま近所の高校へと進学を決めた。
俺の人生はただの惰性だ。
だから目標なんてもの、作れないんじゃなくて作っても意味がないのだ。
人生の最底辺で、生ける人々の反面教師と思い込んでいる平凡なごく普通の男性。
それが俺、遠野達裄の男の生き方だ。
数の少ない親友2人からクラスの打ち上げに誘われたが、ついぞクラスメート35名の内の10名ぐらいしか名前を憶えぬまま卒業してしまった。
そんな興味のない輪に混ざる気もなく断った。
その2人はそれすら断って俺と3人で打ち上げをしようと誘ってきたが、その2人はクラス内でも人気のあった生徒であり、流石に俺だけの為に30名近くの人物をがっかりさせるのもどうかと、変な恨みも買ってしまいそうだったのでお断りした。
どうせ高校も同じ奴らだし問題ない。
……今頃になってはしゃぎたくもなったが後悔は後にしか出来ず。
後悔してから選択肢を選び直すなど不可能なのだ。
当然の如く、俺には卒業式を参観する親も不在で最後の中学校から自宅への通学距離を歩いていた。
「嫌な風が吹いてるな……」
春の訪れを告げる風はまだ肌寒い。
妙に風が肌につつく。
こういう場合、俺の平凡な人生の経験上、ロクな事が起きない。
家に帰りたくないなー、と呟いた瞬間視界に自宅が映る。
そして、その家の前には見覚えのある疫病神の姉の車。
ほらみろ、またやっかいごとが増えた。
帰宅するのを躊躇いながら、俺は自分の家の敷地内に踏み込んだ。
――この姉の訪問が俺の生き方をガラリと変える出来事になる。
そして、彼女らとの出合うきっかけとなるのであった……。
最初のコメントを投稿しよう!