メイドとお嬢様はヒロインになれない法則

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「それでなにしにここに現れた?」 「現れたなんてモンスターみたい」 「そのものだろ」 「ぶっ殺すぞ」 軽口を言い合いながら訪問理由を聞きだす。 親からなにか伝えられたとか、今後の俺の処遇とかその辺であろう。 「実はこの達裄の住んでる家……、うっ払っちゃいましたー!はい拍手」 「わー」 棒読みしながらパチパチと拍手をする。 ……ん? 「おい、話が飛躍しすぎてないか?」 姉さんは大事な話程簡単に唐突に突きつけてくる。 冗談とは1ミリも思っちゃいない。 「やっぱりね、義務教育が終わったのなら自分で生きていかないといけないんじゃないって家族会議で」 「ドライな家族……」 うちの遠野家はかなりの規模の大きな企業グループの創業者の家系。 金に困る事はない為借金がどうたらみたいなこともないのだ。 家を売って手にする利益はスズメの涙にもならない程度の額なのだ。 「俺まだ未成年なんだけど……」 「アフリカでは今、1分間に60秒が経過しているのよ。それぐらいなんだってのよ」 「……ん?」 特別な話でもなんでもなかった……。 「え?じゃあ俺これからどうすんの?お前の家で妹と3人暮らし?」 「誰がお前なんかマンションに入れるかよ」 拒否されてしまった。 うん、家無かったら高校通うとかしてられねーな……。 「俺はいまから家なき子になってしまったのか……」 「は?家きな粉?何言ってんの?」 「お前が何言ってんだよ……」 人生が惰性の俺だ。 落ちるところまで落ちる。 なんだ、毎度の事じゃないか。 「じゃあ俺明日からダンボールで過ごすわ。高校も入学取り消しで」 こうして、俺のホームレス中学生(卒業済み)がスタートする。 朝ご飯はゴミ箱漁るなんてせこくて汚い真似はしない。 まずは金持ってるボンボンからカツアゲ。 そして紐にしてくれる女探しからだ。 「そんなの始まらないわよ。汚い真似はしないとかほざいているけど物理的に汚くなくなっただけでカツアゲも紐も人間として汚いわよ」 「え?俺もうダンボール準備しちゃったんだけど……」 コーラのダンボールだ。 喉が渇く。 「それは嫌だろうなーって達裄の気持ちを汲んで今後どうしようか進言してあげようか?」 「え?俺もう出掛ける準備してたんだけど……」 「なんでさっきからそんなにホームレスになる気満々なの?」 追いつめられた人間は変われるというからな。 ちょっと実践してみたかっただけだ。
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