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わけがわからない……。
俺は執事になんかなりたくなかったのに執事を押し付けられ巫女の車に乗せられていた。
「あれ?君自分から志願してたよね!?」
「俺がそんな簡単に意志を曲げる程プライドの低い奴と思うたか」
「メイドの3文字で屈したよね?即落ち2コマじゃん」
どうやら巫女と俺には認識の違いがあるようだ。
巫女はメイドに釣られたと思っているが、俺が執事を引き受けたのは巫女に頼まれたからである。
姉の頼みを断る弟など存在するわけがない。
「なんか喉乾いたからコンビニ寄る。あんたなんでもいいから飲み物買ってきて」
「絶対やだ」
「断ってるやん」
姉の頼みに従順な弟など存在するわけがない。
「じゃあどんな弟だと存在するのよ?」
「弟なんかどうでもいいが、妹を甘やかす兄貴ぐらいなら世の中どこにでも溢れてるだろう」
「シスコンキモッ」
「……」
俺には戸籍上姉と妹が存在する。
このギャル姉とその妹である。
その妹とは会った事ない。
多分姉同様ギャルだろう。
どちらも従姉弟であり、親戚だ。
だが、戸籍には存在しない血の繋がった妹も別に存在する。
何年も会った事ないのだが、巫女はすぐにその妹を指して俺をシスコンと呼ぶ。
残念ながら的外れであるというのに。
もう妹の事などとうの昔に記憶から離れてあるというのに……。
大事にアルバムをとっておいたり、ガキの頃に妹の誕生日プレゼントとして贈った甘ったるくて何個も食べてられない市販されている板チョコを冷蔵庫に何個かストックしておいたり、自分と妹の名前を入れて脳内メーカーで遊んでいるだけなのにシスコン扱いされるという屈辱。
もし、この世にシスコンなんていう痛い奴が、仮に存在するとしたらとても失礼な話だ。
別に俺はシスコンではないのでその事で怒ったり、機嫌が悪くなることはしないのだが、仮にもそういう人物も世の中には存在し得るのでシスコンという言葉は安易に使っていい言葉ではないと思う。
まあ、俺はシスコンじゃないから。
ソルジャー風に『興味ないね』ってすかした言い方で断言出来る。
「んでふざけた話は終わりにして……、どうして俺なんかなんの取り柄もない普通の……、取り柄が無さすぎて異常の俺なんかを執事にしようとした?」
「本当に無駄に切れる頭でぶん殴りたくなるわ」
巫女は少々俺を過剰評価しすぎているきらいがある。
好き勝手に生きているだけの年相応な男なのだ。
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