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嫌々ながら、プリントの名前を見ながら名簿にチェックをいれる。
ふと、少し苦いような、甘いような。でも、正直好きではない煙の臭いが漂った。
「……ちょっと、分煙しろよ」
「うん?
お前が喫煙室にいるってことだったら、分煙はできてんじゃない?」
「…校舎内だろ、ここ」
「え?マイルームよ、ここ」
準備室という名のその部屋は、むしろ巣のようだ。
その中で、ゆらゆらと漂う細い煙。
じっとりと睨むと、ひひっと悪い顔をする。
「突然、放課後呼び出しといて、もっと何かないの。気持ちは」
「だって、お前放課後なんて予定ないでしょ?」
「………ないけど」
「じゃ、いーじゃん?
はい、チェックチェックぅー」
はぁ。
さっきよりさらに重いため息が落ちた。
もう、何度となく経験したことだった。
突然の呼び出し。準備室訪問。雑用をさせられる。終わり次第、雑な感謝の言葉と共に見送られる。
不本意ながら慣れた日々だった。
快く受けてるわけでもない。
でも、とくに拒否したことはない。
僕の性格のせいか、あいつの性格のせいか。
僕とあいつは、淡々と雑用を任される生徒と、仕事を任せて楽してる性悪教師。
ただの、そんな関係だった。
あの瞬間までは。
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