7/12
前へ
/27ページ
次へ
嫌々ながら、プリントの名前を見ながら名簿にチェックをいれる。 ふと、少し苦いような、甘いような。でも、正直好きではない煙の臭いが漂った。 「……ちょっと、分煙しろよ」 「うん? お前が喫煙室にいるってことだったら、分煙はできてんじゃない?」 「…校舎内だろ、ここ」 「え?マイルームよ、ここ」 準備室という名のその部屋は、むしろ巣のようだ。 その中で、ゆらゆらと漂う細い煙。 じっとりと睨むと、ひひっと悪い顔をする。 「突然、放課後呼び出しといて、もっと何かないの。気持ちは」 「だって、お前放課後なんて予定ないでしょ?」 「………ないけど」 「じゃ、いーじゃん? はい、チェックチェックぅー」 はぁ。 さっきよりさらに重いため息が落ちた。 もう、何度となく経験したことだった。 突然の呼び出し。準備室訪問。雑用をさせられる。終わり次第、雑な感謝の言葉と共に見送られる。 不本意ながら慣れた日々だった。 快く受けてるわけでもない。 でも、とくに拒否したことはない。 僕の性格のせいか、あいつの性格のせいか。 僕とあいつは、淡々と雑用を任される生徒と、仕事を任せて楽してる性悪教師。 ただの、そんな関係だった。 あの瞬間までは。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加