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「世継ぎが必要だ…この明智家の存続の為に。
そしてこの私に成り代わって、信長を討って貰わねば」
重い足取りで部屋の中を何度も往復しているのは、氏族明智家の当主・光綱だった。
「兄上、世継ぎであれば私の息子達のいずれかを…」
その横に座っていた光綱の弟・光安が言いかけると、光綱はそれを一蹴した。
「ならん!あれらは皆学問の才も教養も無く筋が悪い。
この明智家の命運を託すなど言語道断!
まして信長を討つなど…」
「あ、兄上とはいえ口が過ぎるのではありませぬか?!」
「光安、お主も父親として子供らにもう少し目を掛けてやるべきだったな。
ーーー私が若き日に大病を煩わせなければこのようなことには…」
「養子を貰えば良かったのでは…?」
光安の言葉を聞き、光綱がキッと光安を睨んだ。
「明智家の血が流れている者でなければ信用ならん!
この戦国の世に裏切りはあって当たり前!
だからこそ血筋の者から優秀な跡取りを見つけたいのだ。
だが、私の目にかなう者が未だ見つからぬ」
光綱はどかっとその場に座り込んだ。
「…無念じゃ。ただでさえ私は子を残せぬ身体というに、この命ももうすぐ尽きようとしておる」
「今はこうして歩くこともできておりますのに…」
「医者の言うことは本当だろう。
鶴瓶を落とす勢いで日に日に身体が衰えていくのを感じている。
早く血筋の者から世継ぎを探し出さねばーーー」
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