お世継ぎ騒動

10/31
前へ
/865ページ
次へ
その後椿と共に改めて屋敷内を見て回り、 奉公人達に顔見せをした。 皆明智家の希望の星と聞き光太郎に尊敬の眼差しを向けた。 会社では時に上司や取引先の叱責に耐えながら働いていたが、 ここでは光綱を除く全員が自分を敬っている。 光太郎はこの状況に少しだけにんまりとしたが、 そんな悠長なことを思えたのはほんの一瞬のことだった。 椿に一通り屋敷の説明をしてもらった後 再び光綱から呼び出され、そしてこう告げられたのだ。 「今日はもう休んで構わぬが、明日早速秀吉殿に挨拶に伺おうと思う」 「えっ、明日ですか?!」 「ゆくゆくは信長征伐のことを持ち掛けようとは思うが、 お主は秀吉殿の心を開くことに専念せよ。 まずは信頼関係を結び利害まで一致させねば、 血縁者以外と協力し合う事は困難じゃ」 随分と急だな… この人はよっぽど早急に信長を倒したいんだな。 でも、歴史上の偉人と会えるのは緊張するし楽しみでもある。 仕事で身につけた技術が活かせるかは分からないけれど、 とにかく俺は史実のように秀吉に殺されたりはしない! 秀吉の心を開いて、同盟に漕ぎ着けてやる! そしてーーー信長を倒した暁には何とかして元の世界に戻ってみせる。 光太郎はそう決心し、その日は夕食も摂らずしとねに入った。
/865ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1645人が本棚に入れています
本棚に追加