延暦寺焼き討ち

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信長の命により延暦寺焼き討ちの計画を立てることになった光太郎、秀吉、家康は部屋に集まり作戦を練った。 といっても、椿をぶった件で秀吉と家康はすっかり仲違いをしており、 話し合いはまともに進まなかった。 仕方なく光太郎が間に入って話を進めたが、ふと家康が光太郎に話しかけた。 「光秀っていつも冷静だね。 君の言ってることってまともだけど、本音がどこにあるのかわからないよ」 「そうかな? 俺からしたらむしろ家康殿の方が何を考えているかわからないけど」 「ふふ、当ててごらんよ」 家康と光太郎が仕事以外の話を始めたのが面白くないのか、 秀吉は外の空気を吸いに行くと言い席を立ってしまった。 「…子どもだねえ、あの猿は」 「家康殿も人に突っかかるようなことは言わない方がいいのでは?」 「光秀は真面目だね」 「そうじゃなくて、これから一緒に任務をこなす上で仲違いしている場合じゃないって」 「自分の奥さんとは上手くいってないのにねえ…」 家康がにんまりと笑ったのを見て、光太郎ははっとして彼を見た。 「…どういうこと? 家康殿にどうして俺と煕子の仲が分かるわけ?」 「ま…奥さんはあんたに隠し事してるんじゃないかと思ってね」 「隠し事?家康殿、あなたまさか…」 「煕子は光秀に一途な女だよ。 隠し事っていうのはそういう話じゃない。 でも、君がちゃんと煕子を気遣わなければいつか手遅れになるかもね」 「手遅れって…何だよそれ…」 光太郎がむっとすると、家康は急に話題を変えた。 「ところでどうしてあんたは寺の焼き討ちなんて酷い任務引き受けちゃったの?」 「…それは…信長様の命だから…」 「でも、今までだって敵や裏切り者の家臣を殺すよう言われても その賢い頭で上手く言いくるめて交わしてきたでしょ。 それなのに今回の大量虐殺計画には逆らわないんだ」 「…逆らうわけにはいかなかった」 「へえ…奥さんでも盾に取られた?」 家康の鋭い指摘に光太郎は驚いた。 家康の言動には腹が立ったが、この男には嘘をつくべきではないと本能で感じた光太郎は、 正直に信長に言われたことを話すことにした。 「やっぱりね…。 で、そうまでして奥さんとは別れたくないんだね」 家康はくすりと笑った。
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