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光綱は世話係として一人の侍女を光太郎につけた。
「初めまして、椿と申します。
次期当主の光秀様のお世話をさせて頂けるとあり光栄です」
丁寧に頭を下げ挨拶した娘は、
椿と名乗り、にこっと光太郎に微笑んだ。
歳は自分より幾分か下に見える。
快活で人懐こい雰囲気は、ここへ来て厳格な光綱としか話していなかった光太郎の緊張をほぐしてくれた。
「これからよろしく頼む…って、正直突然後を継ぐことになって間もないし、まだ偉ぶれないよね。
立場とか関係なく仲良くしてくれる?」
突然知らない世界へ来て心細く感じていた光太郎は、
少しでもここの人々と仲良くなりたいと思った。
それを聞いた椿は
「そ、そんな!
滅相もございません。
私は元々町娘で見習いの身を抜けたばかりなのでこのように高貴な御身分の方と仲良くなどと…」
と慌てて答えた。
「でも、これから君にはお世話になるからね。
色々相談するかもしれないし、だから君からも気軽に話しかけて欲しいんだ」
光太郎は思わず、会社で後輩に指導するかのような気持ちで椿に言った。
当然だけど、会社での上下関係以上に、きっとこの世界での身分差は大きな壁があるんだろうな…
光太郎は、出しゃばりすぎたかと反省したが、
椿はその言葉にぱあっと顔を明るくさせた。
「では、そうさせていただきます!
正直、厳格な光綱様の後継ですから心していたのですが…
光秀様が話し易いお方で安心しました!
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
椿の無邪気な笑顔を見て、光太郎も少し嬉しくなった。
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