大晦日の秘密

5/9
前へ
/11ページ
次へ
それでも、結婚式にはムリをしてでも出てきてくれた和俊は、いつまで経っても優しいお兄ちゃんである。 「兄さん、忙しいみたいだからね」 『きちんと食事をしてるか心配だって、母さんがうるさくてな。和俊は帰ってくるのが面倒なんだろう』 「兄さん、自炊しないからね」 貴之は、母の手伝いをよくしていたのもあって、家事はかなり得意なのだ。 その点は、晴香より上である。 晴香は手伝いはしていたのではなく、させられていたため、身につかなかったようで、掃除も料理もそこそこのレベルであった。 『嫁でも来てくれたら、安心なんだろうが、和俊は仕事ばかりだから、なかなか嫁はきてくれないかもしれないな』 二人で笑いながら、兄の話をし、キリがついたところで、夕方くらいには行くと伝える。 父は、だったら、はるちゃんも交えて買い物をしようと提案して、貴之はそれを了承して、電話を切った。 正月の間ゆっくりしていけと言われたので、準備にゆっくり時間をかけて、行くことにした。 一時間くらいで帰れる距離なので、そんなに急ぐ必要もない。 ただ、父がなぜ狼狽していたのかだけ、貴之は気になっていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加