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ゆっくりくつろぎながら、二人が作った料理を待つのだった。
「そういえば、父さん、電話でこっちにくるって言ってたときに、何で少しうろたえてたの?」
貴之は、ふと気になっていたことを聞いてみることにした。
「ああ、あれか。あれには少し事情があるんだ」
「事情?」
「実は、お前たちが子供の頃に約束したんだ。とはいっても、和俊が赤ちゃんの頃だから、子供とは言わないかもしれないがなあ」
懐かしむように目を細める父。
それを、見つめる貴之は、父の顔にも皺が増えたなあと思う。
声が若々しく、年だからと言って禿げたり白髪が多かったりしない父に老いというものをあまり感じていない貴之ではあったが、この瞬間に父の老いを確かに感じていた。
「私はな、実は蕎麦が大嫌いだったんだ」
「え、嫌い?父さんが?蕎麦を?」
「そうは見えなかったか?」
「ごめん、気づいてもなかった」
それを聞いて、父は「それはよかった」と、優しい笑顔を浮かべている。
何がいいことなのか、貴之には理解ができず、目を丸くするだけであったが、父はそんな貴之に説明をしてくれた。
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