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「だけど、それを嫌だと思ったことはないぞ。子供のためなら頑張れるものだからな」
と笑いながら言う父。
「頑張ってたんだね、父さんも」
と言いながら労う貴之。
小さい頃から温かい家庭で育ってはきていたのだろうが、そのエピソードはまた父からの愛情を深く感じるものであった。
子供に日本の風習を教えるために、今まで食べなかった蕎麦を初めて食べたときはどんな気持ちだったのだろう。
いろいろと聞きたい気持ちになって、貴之はどんどん話を進めていった。
が。遠くからも似たような会話が聞こえてきた。
「えー、お義父さん、お蕎麦食べれないんですかぁ」
晴香の声だった。
蕎麦が食べられないことを、母が暴露してしまったらしい。
「そうなのよ。子供の頃から、蕎麦が嫌いなんですって」
「じゃあ、このおうどんはお父さんが食べるんですね」
きゃっきゃと楽しそうに会話する晴香が、家族との関係にトラウマを持っていたようには見えない。
きっとこの温かい両親が変えていってくれたのだろう。
結婚する前から、大事にしてくれた両親に感謝しながら。
父が蕎麦から解放されたことを祝おうと、貴之は思うのだった。
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