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結局の所、私が空を見ることは瞳と関係の無い所であり、あの後病院に行って掛かり付けの医者に有ったことを尋ねたところ、意味は無いが、それでも無駄ではないとの事だった。 「その理由を聞いたのだが、のらりくらりとかわされて教えて貰えなかったのだ。と言う事で晴樹よ。その理由を教えてくれないか」 今まで朝に会った事など一度きり、それも昨日の事だと言うのに、これも神様の悪戯なのか。今日の朝、日傘をさし、昨日とは違うゴスロリ姿を纏った私と、無駄に頭の回る生意気な彼は出会った。 そして最初の一言である。 「……えっと、取り敢えずお早う。奏先輩」 「うむ。今日も言い天気だな。最も見ることは不可能だが」 雲一つ無い快晴である。こんな日に空を見上げたら数秒で即倒してしまうのでは無いだろうか。 そんな青空の下、昨日とはまるで逆。私が彼に後ろから話し掛ける運びとなったわけだ。 「それで何だっけ。何を教えて欲しいって?」 「ああ。昨日の事だ。あの時お前は無駄だったと言った私にそんな事は無いと言ったな。その理由を教えてくれないだろうか」 少し言いづらそうに渋っている彼の首もとに手を回し、無理矢理日傘の中に引き込む。そしてあの時のように瞳を覗きこんだ。 うむ。やはり綺麗な空の色をしている。 「……えっと」 「ふむ。どうした?何時ものような気丈な態度で構わんぞ。私とお前の仲に先輩後輩などあって無いような物だ」 こうやって無為な話をしたり、有意義な議論をゼミで繰り広げたり、笑いあったり。そんな仲であるのだ。今更敬意など皆無である。何より彼の敬語など始めに会ったきり聞いたことがない。 先程から黄色い悲鳴、と言うか興奮したような声が回りから聞こえてくるが、今日は何かイベントでもあっただろうか。 「……先輩わざとやってます?」 「わざと、と言うのが私の意思でやっていると言う事ならイエスだな。まさか無意識にやるわけがないだろう」 夢遊病の気は無いし、自我もはっきりしてる。わざと、うむ。自分の意思でやっているな。 「……えっと、昨日の理由でしたっけ」 「ああ。なんなら放課後にゆっくりとでも構わん」 「こう言うことです」 瞬間、彼の瞳が更に近付いて、私の唇に何か触れた気がして、突然の事で吃驚して日傘を落とし、私が倒れるまで、あと数秒。 ああ。空の色はやはり美しい。
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