青空が見えない

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呼び止められた。振り返るとそこに男性がいた。 「ねえ」 背の高い男性は、私を知っているかのように話しかけてきた。まあ、初対面では無いのだが。 「何だ」 何だと言うのだ。こんな日の当たるところにいると、万が一があるかも知れないではないか。こんな往来の真ん中で倒れたらお前が責任を取ってくれるのか。 「何で傘なんてさしてるの。晴れてるよ?」 無駄に容姿の整った彼は、悪びれる様子が全く見えずそう言ってきた。確かに彼とは今まで建物の中でしか出会ったことが無い。外で出会うなんて初めての事ではないか。 「そんな事知っている」 晴れているからこそ傘を、日傘をささなくてはいけないのだ。私みたいな体質の者にとって、他社と同じように太陽光を喜べると思うなよ。 「なに。吸血鬼か何かなの」 特徴的な猫目の彼は失礼だ。 「そんな訳が無いだろう」 私は人間だ。太陽に浴びたからと言って塵になどなりはしない。直接見ると一ヶ月はベッド上の生活になるだけだ。 「良い天気だよ」 知っている。だからだ。私よりも20cmは身長の高い彼はとても面倒臭い。 「日傘をさして悪いことは無かろう」 ビニール傘みたいな安っぽい物では無い。真っ黒で太陽光も雨も通さない素敵な傘だ。フリルとかもついて可愛いじゃないか。
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