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いよいよ今日は王都ディルクに出発する日だ。
村中のみんながジンを見送る為に集まってくれていた。村中とは言ってもそんなに多い人数では無かったが、だからこそ村中のみんなで助け合ってきた。
ジンにとっては村のみんなは家族でもあった。
「おい!ジン!気をつけていけよ!何で急にお前だけが呼ばれたかは分からないけど、大丈夫!何でもないさ」
「そうだよ。用事が済んだらすぐに帰って来いよ!」
幼馴染みの面々がみんなジンを叱咤する。
みんなも何故ジンが王都に呼ばれたかは分からないから不安なのだ。
「うん、行ってくるよ。みんなありがとう!、、じゃあ父さん、母さん行ってきます」
神妙な顔をしていた父はジンの目を見つめながら言った。
「ジンよ、お前は父さんと母さんの子供だからな。、、待ってるぞ」
「そんな大袈裟だよ、父さん。一週間ぐらいでは帰れるはずなのに」
「、、、そうだったな。道中気をつけてな」
「ジン、本当に気をつけてね」
母が震える声でそう言うと父は母の肩を抱いた。
ジンは荷物が入ったリュックを肩にかける。そしてみんなの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
そう、たった一週間程出かけるだけだ。
しかし父の言葉がやけに心に残った。やはり父は何か知っている。両親の態度が余計にそう確信させた。
けれどそれも王都に行けば分かる事だ。
自分にそう言い聞かせてジンは王都に向かった。
それがとても長い長い旅の始まりになる事も分からずに。
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