1…失職

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何か大切なものが消えかけていく。 何か大切なものが減っていく。 何か大切なものを忘れていく。 何か大切な気持ちを失っていく。 私だけが、その大切な気持ちを貫こうとして。 灰色の淀んだ世間。 濁った歪んだ社会。 欠落した人々たちに、踏みつけられて傷つけられてしまった。 私は仕事を辞めたのだ。 辞めて地元に戻った。 ご飯も食べれないくらい。 眠れないくらい。 生きた心地のしない。 働き甲斐のない。 職場の若い女たちの冷ややかな態度に。 心が不安定になって。 泣いてばかりの毎日だった。 職場の若い女上司の角の立つ言葉に。 いちいち、つらくて悲しくて。 悔しくて腹が立ったりして。 何度も何度も辞めたいと、家族や友人に話していた。 大人でも、イジメがあるんだ。 そう思えた。 仕事に託つけて、年齢のいった私は、孤立させられていた。 職場で優しく言葉を掛けてくれる人だなんて、誰一人もいなくて。 気ばかりが、私の脳を覆って。 最後の方は、震えが止まらなくなっていた。 神経が研ぎ澄まされていたから、小さな物音でも驚いて、何もかもがイヤミに聞こえて、席を離れると私の悪口を言って嘲笑っている…。 そんな気持ちにさせられていた。
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