1…失職

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「あら、可愛い。はじめましてトシちゃんですよ?」 おじさんは嬉しそうに、 「もぉ、よー泣く泣く。耳がキーンとなる」 そんな言葉におばさんが、 「あんたの大笑いのが、キーンとなるわ」 突っ込みを入れられて、 「おふくろの小言も、大概キーンとなるって」 あつ兄も負けまいと言う。 「もぉ、みんな言い過ぎー」 私は、あつ兄の奥さんと笑う。 笑いの絶えない家族なのだ。 だから、私の父は。 私に、ここで一ヶ月静養したらいいんじゃないか? と、アドバイスをしてくれたのだろう。 先ずは笑顔を取り戻す事だと。 居間には、おばあちゃんが座っていた。 90歳は過ぎていても、自分でなんでもやるおばあちゃんは元気だ。 せかせかとお皿を並べたり、お箸を置いたりと動いていた。 「おばあちゃん」 声を掛けると、私の事情を色々と聞いていたのだろう。 抱き締めてくれて、私の手をさすって、 「可哀想に、こんなに痩せてしまって。嫌な思いたくさんしたなー。もう大丈夫だからなー」 私は泣いてしまった。 「心配掛けてごめんね。うん、少しずつ元気になるね」 「そうだな、さぁさぁ、ご飯にしよう。たくさん食べて太って帰らせんといかんでな」
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