跳ぶ。

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跳ぶ。

あの時のことを思い返すと、ああぼくはなんて愚かだったんだろうと今更ながらに後悔する。 ざらざらと肉を削るような荒んだ風が頬と肩の隙間を抜けていく。 丁寧に揃えられた靴。そのそばに横たわる薄汚れた手帳。 ぼくはそれらを一瞥して身を翻すと、何も口にせぬまま、肺いっぱいに空気を含めて地面を蹴った。 耳元で脈々と流れる鼓動はやけに大きく聴こえた。 景色が急速に過ぎていく。僅かに開いた瞼の隙間から覗く空は、皮肉なほどに澄み渡っていた。
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