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あのとき和子は声をかけるなどして確認しなかったので、
その人物が塩谷学であるかどうかはわからない。
が、
仮に彼が塩谷本人であったとしたら、
数十年の時を経ているにも拘らず、
その容貌は昔の姿を髣髴とさせるものだ。
約三十年前の高校生当時、
塩谷学は瘠せていて、
また背の低い青年だった記憶がある。
仲間とつるむのが嫌いなのか、
それとも別の理由があるのか、
どのクラブにも属していないようだったが、
体育の時間に教室から校庭を見下ろしたとき垣間見たその肉体は高校生なりに締まっていて、
和子に淡い羨望を抱かせる。
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