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「えっ、
そうなの?」
みどりの言葉が事実として和子の心の裡に実感されるまで、
いくらかの時間がかかる。
実態を持たない音声としての言葉が和子の耳の奥に静かに落ちる。
と、
不意にその音声と意味とが繋がり、
瞬く間に胸中で暗い色を持った何かに変り広がって、
和子がみどりに聞き返した声にも自然と驚きの色が付く。
それに反応したのか、
「何? 何? 何? 何……」
と高校生当時から男女の噂話に目のない旧姓初川恵が、
ぎゅう詰めの席から、
いささか太めの身を乗り出して和子たちに向かって声をかける。
「あらっ」
と、
その声に反応して首をまわすと恵の視線が和子を捉える。
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