秘密

7/13
前へ
/134ページ
次へ
「えっ、 そうなの?」  みどりの言葉が事実として和子の心の裡に実感されるまで、 いくらかの時間がかかる。  実態を持たない音声としての言葉が和子の耳の奥に静かに落ちる。  と、 不意にその音声と意味とが繋がり、 瞬く間に胸中で暗い色を持った何かに変り広がって、 和子がみどりに聞き返した声にも自然と驚きの色が付く。  それに反応したのか、 「何? 何? 何? 何……」  と高校生当時から男女の噂話に目のない旧姓初川恵が、 ぎゅう詰めの席から、 いささか太めの身を乗り出して和子たちに向かって声をかける。 「あらっ」  と、 その声に反応して首をまわすと恵の視線が和子を捉える。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加