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年賀状
バイクが走る音がする。
絶対郵便配達の人。家の側で止まって…走り去った。年賀状がきた。
慌ててポストに確認に行く。やっぱり、あった。
今にいる家族の元へ行き、届いたハガキの束を仕分ける。それなり自分宛も来てるけれど、目当てのハガキは一枚だけ。
同じクラスの高山くん。冬休み前に、元旦にハガキが届くよう年賀状を出そうって約束した。
でも、約束したのに、年賀状の山の中には高山くんからのハガキがない。
出すのが遅くて、強に間に合わなかった? でも、終業式に、今から書くって言ってた子のハガキはあるよ?
約束はその前だから、守ってくれたら着いてるよね?
本当は、面倒な約束だと思われてたのかな。
そう思ったら、お正月早々泣きたくなった。
その瞬間。
鳴ったチャイム。お母さんが玄関に向かい、すぐに、お友達が来たわよとアタシを呼ぶ。
誰? お正月早々会うとか、そんな約束した覚えもないんだけれど。
泣きたい気持ちもあって、ちょっと不機嫌になりながら玄関へ向かう。そこに、思ってもいなかった相手が立っていた。
「高山くん?」
どうしてと、思った瞬間手招きされて、反射で家の外に出た。
呆然としていると、一枚のハガキを差し出された。
「えっと、その…約束の、年賀状。ちゃんと、元旦に届けたから」
…約束って…『年賀ハガキは、元旦に届くように投函する』ってものじゃなかったっけ?
アタシの勘違い? それとも高山くんが間違えた?
どっちにしても考えが行き違っているのは事実だから、その旨を告げると、高山くんは真っ赤になった。
勘違いしてたごめんと謝るから、アタシの方こそ間違えてたかもと、暫く二人で謝り合った。そしてその後は笑い合った。
「わざわざありがとう。アタシの方は、多分、家に届いてると思うから」
「うん。判った。帰って確認する」
そう言って、高山くんはハガキをアタシに手渡し、帰って行く。それを見送って、アタシは受け取ったハガキを抱きしめた。
印刷された干支のイラストに、今年もよろしくと手書きの文字が添えられた年賀状。今までにない届き方をした年賀賞。
多分、一生の宝物になるだろう。
年賀状…完
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