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誕生日でもクリスマスでも無い。
ただの夏休み。
こんなわがまま、聞いてもらえるなんて思わなかったけど。
『……一番小さいのでいいか?』
この言葉にどれだけ喜んだことか。
父親もヒナに罪悪感みたいなものを持っていたのかもしれない。
けれど、幼いヒナにとってそんなものをどうでもよくて、ただ嬉しかった。
『ありがとう! これ、ずっと大事にするね!!』
それから寝るときはずっと一緒。
パンダの白い部分が黒く汚れていくと、一緒にお風呂に入って石鹸で洗った。
そんなぬいぐるみも、成長するにつれてただのぬいぐるみになって──。
「すごく大好きだったのに……」
いつからそれがなくても眠れるようになったんだろう。
いつから話し相手がぬいぐるみから携帯電話に変わってしまったんだろう。
いつ、
捨ててしまったんだろう――。
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