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ヒロ君、初めてのおつかい
カーテンから薄く漏れる光に朝が来たのはわかっていたけど、このぬくもりを離したくなくて瞳は開けずにいたのだけど……。
「――うっ、ん……」
いつもとは違って、少し苦しそうな声にヒロキは琥珀の瞳を薄く開けた。
腕の中ではおなかを抱えるように丸くなって薄っすらと額に汗を滲ませる子犬。
「ヒナ?」
声を掛けると、大きな瞳がゆっくりと開いてこちらを向く。
「……ヒロ、君、おはよ」
まだその表情は虚ろ。
けれど苦痛に歪むその笑顔にヒロキは眉をひそめた。
「どうした?」
「なんでも……」
「無いわけないだろ?」
そう強く言われて、ヒナは口ごもった。
原因はわかってる。
でも、口にするのも恥ずかしくて……、
何より痛くて仕方ない、体を動かすのも億劫なくらいに。
「ヒナ!」
ヒロキは体を起こし、シーツをめくって見えたものに思わず動きを止めた。
「――あ」
その声にヒナもヒロキの視線を探って――、
「や――っ!」
めくられたシーツに手を伸ばし、それを隠す。
見えたのはシーツを染める赤いもの。
「ごめんっ! ごめんなさいっ、ちゃんと洗濯するからっ」
「……い、や、いいから、とりあえずシャワーでも――」
「大丈夫っ! 本当にごめんっ! とりあえず、出て!!」
「――は?」
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