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朝になり行われる葬儀。
お経が響き線香の匂いが充満する。
長いお経。
それでも一人の人間と最後のお別れをするには短い時間なのかもしない。
出棺して、棺は運ばれ更に寂しい場所に移された。
木々に囲まれ辺りに他の建物はない。
冷たい大理石の床、大きなガラス戸にはいまだ雨粒がぶつかる。
棺には綺麗な花が敷き詰められて――。
「最後のお別れです」
その声にすすり泣く声が大きくなる。
「ヤダ! 焼いちゃダメ! お父さん、熱いよ!」
隣で残された子供も棺にしがみついて鳴き喚く。
なのに、ヒナはその光景を辛そうに見るだけで泣くことはなかった。
「よろしいですか?」
係員の声にヒナは無言で頷く。
「それではこちらのスイッチを――」
そして無機質なのスイッチを、押した。
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