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とりあえず用意してもらったダンボールに詰め込んでいく。
要らないものはビニール袋に。
何を残して何を捨てるのか。
その判断も分からないまま作業を進めていく。
「なんなら、全部持って帰っても――」
ヒロキのその声にはふるふると首を振る。
「そんなことしてたら、いつまでも捨てられないから」
そう言って薄く笑う彼女になんと言えばいいのか。
結局、ヒナが残したのはダンボール一箱だけ。
「いいのか?」
「うん。だって服とかお布団は要らないし、テレビとか事務用品なんかはこっちで使ってもらえばいいし」
そして彼女はその箱を持ち上げて立ち上がる。
「これにしたってどうすればいいのか分かんないくらいなのに」
なんて苦笑するから、ヒロキはその箱を彼女から取り上げた。
「置いときゃいいんだよ、ヒナが『要らない』と思う日まで」
そう口にして背を向けるとヒロキの背中に「……うん」と小さな声が返ってきた。
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