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雨はまだ止まずに降り続ける。
その中を傘をもって車に乗り込む。
「それでは、失礼いたします」
「色々とありがとうございました」
会社関係者にヒナもヒロキも頭を下げて、寮を後にした。
鬱蒼と茂る木々。
落ちてくる雨粒は大きくなりフロントガラスにぶつかる。
その音でカーステレオからの音楽も聞こえないほど。
「ねぇ、ヒロ君」
「ん?」
「あと、何やればいいんだっけ?」
「……」
これですべてが終わるわけじゃない。
書類うんぬんもあるが、彼女の座の上にある白い箱も――。
だけど今は、
「とりあえず寝ろ。着いたら起こしてやるから」
「……うん」
ほんの少しの安らぎでもいい、彼女に与えたかった。
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