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黒い服を着たまま家に。
ダンボールは部屋の隅に置ける。
「……」
でも困るのはヒナの腕にある白い箱。
大切だけれど、これをリビングに置いておくわけにもいかず、ヒナは無言で自分の部屋に運んだ。
ベッドに座って隣において。
「……帰ろっかな」
そう呟いて、白い箱は置き去りにして、黒い服は脱ぎ捨てる。
それだけで息が出来る気がした。
ヒナが着替えてリビングに現れたときには、ヒロキはベランダで煙草をふかしていた。
彼はまだ礼服を着たままだ。
「ヒロ君、お風呂いれよっか?」
「ん? あぁ、別にシャワーで済ませても」
「ありがとね」
「……」
「傍にいてくれて」
「ばーか」
「やっぱり、お風呂入れてくる!」
そう言ってペタペタと素足でフローリングを歩くヒナを見て、ヒロキは大きく紫煙を吐いた。
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