Pray

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目が覚めたのは朝、と言うには早すぎる丁度夜が明ける頃。 ゆっくりと大きな瞳が景色を映す。 いつもと変わらない景色。 そんなことに小さく安堵して息を吐く。 隣に眠る彼を確認してそっとその腕から抜け出した。 きっと昨日も遅くまで仕事をしていたはずだから。 なのに――。 「あ」 「どこ行くつもりだ?」 逞しい腕が腰に回されて、また彼女をベッドの中に引きずり込む。 「……起こしちゃった? ごめ」 「どこ行くのかって聞いてんだよ」 まだ眠そうで、少し不機嫌な声に返す言葉もなかなか見つからなくて。 「えと……、ちょっとそこまでって言うか」 「こんな時間、コンビニしか開いてねぇよ」 「……」 「連れてってやる」 「えっ?」 そのままギュッと抱きしめられて振り返ることも出来ない。 「だって、ヒロ君」 「言えよ、連れてけって」 「でも遠いし――」 「じゃねえと首に輪っかつけてベッドに縛り付けるぞ」 「……嘘だ」 「本気でやんぞ」 抱きしめる力が、息も出来ないほど強くて。 「――うん、連れてって」 そうとしか言えなかった。
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