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車に乗って高速道路をひた走る。
「どこか寄るか?」
「ううん、平気」
いつもなら『あそこのサービスエリア限定のアイスがあるんだって!』なんて絶対に寄りたがるのに。
結局、どこにも寄ることなくICを降り、山道へ。
雨は止んでいたがどんよりとした天気。
木々が覆う道は薄暗く、峠を越える道は右に左にくね曲がる。
「……ちょ、ごめん」
「ヒナ?」
くぐもった彼女の声に横を見れば、ヒナの顔は真っ青で――。
車は砂利を跳ね飛ばし止った。
「大丈夫か?」
「……うん」
ヒナは車か降りて大きく深呼吸した。
「馬鹿が、気分悪いならもっと早く言え」
「うん、ごめん」
「謝るな」
「ん、ご――」
「馬鹿」
ガードレールにもたれかかり、ヒナは彼に引き寄せられて頭を彼の肩に預けた。
今まで車で酔うことなんて無かったのに。
これが精神的なものだと分かってるから、何も言わず彼女の背中をそっとさすってやる。
その心地よさにヒナも小さく息を吐いて目を閉じた。
「梅雨ってまだ明けないのかなぁ」
「まだ先だな」
「そっか」
どうでもいいことばかり口にした。
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