Pray

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細い道をゆっくりと登っていく。 たどり着いたのは――。 「車で上までいけるのか?」 「うん、多分。ほらあそこから……」 少し高い場所にあるお寺。 大きな門をくぐって中に。 車を降りて地面に足をつける。 ジャリッと音を鳴らして、ヒナは少し立ち止まってしまった。 「大丈夫かな? 檀家って言っても……」 もう何年もここには来ていない。 だからお布施も寄付もして無いわけで、それでも大丈夫だろうか? 「仏に仕えてんだろ? んな理由で断るなら」 帰ればいい。 「どちら様かな?」 そう言おうとして、ヒロキは言葉を飲み飲んだ。 ヒロキを遮った声は、お寺の脇に建てられたごく普通の家の玄関から。 そして、そこから出てきたのは中年の男性だった。 「あ」 「ヒナ?」 彼の顔を見て驚きの声を上げるからヒロキも彼女の名前を呼ぶ。 「『ヒナ』?……ん?」 するも彼のほうも首を捻り始める。 「木村先生でしょ? あたし――」 「あぁ! 二宮か!!」 奇妙な再会劇にヒロキだけが「なんだ?」と首を傾げた。
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