5368人が本棚に入れています
本棚に追加
鬱陶しい雨が降り続く。
「ありがとね、じゃ、行ってきます!」
「俺も行くかな」
その雨の中彼女を見送って、彼はアクセルを踏み込んだ。
「ヒナ!」
「あ、唯。おはよう」
いつもの挨拶を交わしたのだけど、唯の表情は浮かないまま。
「どうかした?」
だから首を傾げてそう聞くヒナに、唯まで首を傾げたくなる。
「どうかって……、大丈夫なの?」
意味深な言葉にヒナも「あ」と小さく声を上げて困ったように薄く笑った。
「大丈夫、だと思う」
「思うって」
怪訝そうな唯の声にヒナは「うん」と頷いた。
「まだ実感が湧かないの。一緒に暮らして無いからかなぁ?」
そんな言葉には「……そっか」としか返せず、唯は小さく息を吐いた。
「あたしに出来ることはない? 手伝って欲しいこととか」
差し伸べられる手は暖かい。
「じゃ、学務部着いてきて。一人じゃ心細いもん」
だからそう言うと「わかった」と心強い言葉が返ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!