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まだ梅雨だといっても7月。
「暑いね」
じめじめとした湿気に、照りつける太陽に、歩くだけで汗はじっとりと肌を濡らす。
だから日陰に入って空いたベンチに座って少しだけ休憩。
「子供の頃は平気だったのになぁ」
「興奮してて暑さに気づかなかったんだろう?」
「そうかも。だって休んでる間が惜しかったもん」
もっと動物を見たくて、もっとここに居たくてーー。
「お父さんが休もうって言ってもヤダって走って、ジュース買ってあげるからって言われて」
「休んだんだろう?」
「休んであげたんだよ」
ヒロキの指摘にヒナも笑った。
さわさわと葉の揺れる音、鳥のさえずりもここでははっきりと耳に届く。
羽ばたきの音や動物達の鳴き声。
それは10年経っても変わらなくて――。
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