氷雨

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街路樹のレンガの枠組みに座って俯いている人。 行き交う人々は足を止めず、変なものでも見るような眼差しを送り、通り過ぎても振り返って、いつまでも見ている。 麻衣子も不思議だった。 何しているのか。目が離さずにいた。 だが、次第に行き交う人々の視線に怒りを覚えた。 そっと近づき、俯き座る彼に傘を刺した。 目の前の迷子に気づいたのか、雨が当たらないのを不思議に思ったのか、ゆっくり顔を上げて麻衣子を見た。 男の子なのに、シミひとつない白い肌。 日焼けを知らなそうな。 細身で弱々しい。 濡れているけどわかる、彼は泣いている。 悲しみの中にいる。
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