115人が本棚に入れています
本棚に追加
街路樹のレンガの枠組みに座って俯いている人。
行き交う人々は足を止めず、変なものでも見るような眼差しを送り、通り過ぎても振り返って、いつまでも見ている。
麻衣子も不思議だった。
何しているのか。目が離さずにいた。
だが、次第に行き交う人々の視線に怒りを覚えた。
そっと近づき、俯き座る彼に傘を刺した。
目の前の迷子に気づいたのか、雨が当たらないのを不思議に思ったのか、ゆっくり顔を上げて麻衣子を見た。
男の子なのに、シミひとつない白い肌。
日焼けを知らなそうな。
細身で弱々しい。
濡れているけどわかる、彼は泣いている。
悲しみの中にいる。
最初のコメントを投稿しよう!