114人が本棚に入れています
本棚に追加
ある程度拭き終わって、身につけていたマフラーを剥ぎ取って、無理やり彼の首に巻き付けた。
そして、彼の手を取る。
「立って。」
「え?」
立ち上がらない彼の手を掴み立ち上がらせ、引っ張るように歩き出す。
「あ…ちょっと、どこ、行くの?」
とても弱っているように見えた。
消えてしまいそうに。
だって、瞳に光を感じられなかった。
放っておかなかった。
生きてほしい。そう思った。
「私の家よ。」
「え?!」
「そのままだと風邪ひいちゃうでしょ?5分くらいだから少し我慢して。」
「……う、ん…っ」
氷雨の降る日。
私と彼の最初の出会いだった。
最初のコメントを投稿しよう!