氷雨

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自宅に着いて、麻衣子自身も濡れてしまって、着ていたコートやバッグはハンガーにかけたが服よりも先に、浴室へ走る。 「ちょっと待ってて。」 バスタオルを持ってきて、彼から滴る水を拭き取って家にあげた。 「着替え準備するから、温まってきて。」 背中を押しながら、浴室へ追いやる。 「あの、ちょっと待っ…!」 バタンッ 有無を言わせないよう、少々強引に扉を閉めた。 「お父さんの着替えで良かったよね。」 スラックスとトレーナー、新品のボクサーパンツを持って、そっと浴室の扉を開ける。 シャワーの音がして、ちゃんと入れていると確認した。 持っていた衣服、新しいバスタオルを棚に置いて扉を閉めた。 そのままキッチンに向かい、冷蔵庫脇に吊るされたエプロンを身につける。 冷蔵庫から野菜を取り出す。 野菜たっぷりのお味噌汁とおにぎりを作ろう。 ちょうどお腹が空いてきた頃だ。 彼にも今は食事は必須項目だ。そして温まること。 雨はまだ止む気配はないようだ。
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